CASE STUDY

導入事例

導入事例 徳島県 上勝町(導入機:連結式中型圧縮減容機5070HDC)

サーキュラーエコノミーの最前線 徳島県上勝町

現場を技術で支える「連結式中型圧縮減容機5070HDC」

徳島県勝浦郡上勝町。人口約1,300人の小さな町が今、熱い注目を集めています。その理由は、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を掲げ、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けていち早く取り組んできた自治体だということ。「ゼロ・ウェイスト」とは、焼却や埋め立てに頼らず、すべてのごみを資源として循環させる社会を目指す考え方です。同町では、ごみを捨てるという発想から脱却し、町民一人ひとりが“分けて活かす”ことを徹底してきました。

その象徴が、町内全域で実施されているごみ・資源の「43分別制」です。紙類からプラスチック類、金属、ガラス、衣類、さらには歯ブラシやライターといった細かな品目まで、あらゆる品目が分別・回収されているのです。  この取り組みは、単なるごみ・資源の減量やリサイクルの枠を超え、循環型社会を目指す先進モデルとして、国内外から高く評価されています。  

同町で唯一のごみ・資源の持込み施設である「ゼロ・ウェイストセンター」に設置されているのが、当社の「連結式中型圧縮減容機5070HDC」です。限られたスペースや人手の中で、資源循環を最大化するために、5070HDCはまさに「なくてはならない存在」となっています。

5070HDCの導入によって、分別・資源循環の現場にどのような変化が生まれているのでしょうか。ゼロ・ウェイストを目指す現場の工夫と、詳しい取り組みに迫ります。


分別徹底が生んだ新たな課題 

同町のごみステーション「ゼロ・ウェイストセンター」は、住民用のごみステーションや体験宿泊施設、情報発信機能などを備えた複合施設として2020年に誕生し、その運営を㈱BIG EYE COMPANY(本社:徳島県勝浦郡上勝町、田中達也代表取締役)が担っています。

同センターでは、年間約240tものごみ・資源が町内の600~650世帯から持ち込まれています。多いときには1日で約70世帯が持ち込みを行い、平日は現場スタッフの2人体制(7:30~14:00)、土日は3人体制(7:30~15:30)で分別・受け入れ業務を行っています。  

分別された資源物はかさばるものも多く、保管スペースの確保は大きな課題となります。特に容器包装プラスチックやペットボトルなどは、回収業者による引き取りが4カ月〜半年に一度と低頻度なため、限られたスペースの余裕がなくなってしまいやすいのが現状です。

また、品目ごとに手作業で再仕分け・梱包する作業は非常に煩雑で、スタッフの負担は増加。  業者による引取・運搬時には、積載効率が悪くコストがかさむ要因となっていました。

同センターは、こうした現場の課題を解決するため、圧縮減容機の導入を検討し始めたといいます。  

5070HDCを導入したのは、2001年。決め手となったのは
①容器包装プラスチックとペットボトルを1台の機械で圧縮できること
②容器包装リサイクル協会に引渡しができる規格で圧縮できること
③人力で運べるサイズに圧縮できること の3つのポイントでした。

同センターの分別・回収場所


導入効果:「保管効率」「作業効率」「衛生」向上 

2001年、同センターは回収場所近くの作業場に5070HDCを設置し、容器包装プラスチックとペットボトルの圧縮梱包を始めました。

従来の分別徹底によって生じていた保管や作業の課題が、5070HDCの導入によってどのように解決されたのか、具体的な効果を見てみましょう。


【月間回収量】

容器包装プラスチック:586kg/月(平均)

ペットボトル:199kg/月(平均)


【保管スペース】

容器包装プラスチック:約9㎡

ペットボトル:約6㎡

※1パレット(約1㎡)に3ベール×2段


効果① 保管容量の増加

・容器包装プラスチックは約5分の1、ペットボトルは約6分の1サイズに圧縮され、保管容量が5〜6倍に増加(最大保管量は、容器包装プラスチック約1.3t分/ペットボトル約900kg分に)


効果② 引取・運搬時のコスト削減

・運搬時のコストが5〜6分の1に減少


効果③ 作業負担軽減

・1ベールあたりの重量は20〜30kg、大きさはW700×D500×H700mmに圧縮され、スタッフ1人でも扱えるため、安全性の向上と作業負担の軽減を実現

・品目ごとに手作業で再仕分け・梱包していた工程が大幅に効率化


効果④ 衛生向上

・圧縮によって空気に触れにくくなり、長期保管時のカビ発生リスクが低減

圧縮後のペットボトル

圧縮後の容器包装プラスチック

容器包装プラスチックとペットボトルの保管場所

分別の高度化と住民負担軽減への挑戦                                                                      

同町のゼロ・ウェイスト政策は、リサイクル率約80%という成果をあげてきましたが、さらなる課題も浮かび上がっています。現在、約20%のごみは焼却または埋立て処分に回されており、これには革製品や塩ビ製品、衛生用品、複合素材製品、貝殻、塗料が付着したものなど、現行のリサイクル技術では対応が難しい品目が含まれます。この残る約20%を資源化するため、同町では実証実験や企業連携を進め、リサイクル技術の開発や新たな資源化ルートの構築に取り組んでいます。さらに、生産者に対して「ごみにならないものづくり」や販売方法の転換を働きかけることで、将来的には住民の分別負担そのものを減らすことも目指しています。

また、分別数の見直しや洗浄の手間を減らす仕組み、集落ごとの拠点回収の実証実験、運搬支援対象の拡大、ポイント制度の充実など、住民負担軽減のための取り組みや分別の手間に見合うメリットを感じてもらえる仕組みも模索中です。

「たとえ手間がかかったとしても、それに見合うメリットがあれば負担感は軽減できる」という発想のもと、住民の声を反映した施策が検討されているのです。

同町のポイント制度「ちりつもポイントキャンペーン」のチラシ

高度な分別現場で選ばれる理由

上勝町では、古くからパッカー車(ごみ収集車)によるごみ収集の仕組みが存在せず、住民自らがごみ・資源を分別しごみステーションに持ち込んできた独自の歴史があります。こうした特有の地域事情が、徹底した分別と先進的なサーキュラーエコノミーを実現してきました。

他自治体が同町の事例を全く模倣することは難しいものの、地域の特性に合わせた分別・資源循環の仕組みづくりのヒントとして多くの注目を集め続け、国内外から年間2,000人を超える視察者が現場を訪れるなど、全国の自治体や事業所のモデルケースとなっているのです。

このような先進的な現場で採用されている5070HDCは、単なる圧縮減容機の枠を超え、現場の分別力・作業効率・安全性・省人化を総合的に底上げし、サーキュラーエコノミーを実現するために欠かせないツールの一つであるともいえます。

そして「多品目同時圧縮による現場効率の向上」「高密度圧縮と安定した品質」「現場にフィットしたコンパクト設計と安全性」「長期運用を支える耐久性とサポート体制」などの機能やサービスが、分別の高度化・多様化が進む現場で選ばれる理由なのです。

また、同町の先進的なゼロ・ウェイストの取り組みは、自治体という面ではなく、都市部のビルという単位でも生かされることとなりました。三菱地所㈱(本社:東京都千代田区、中島篤執行役社長)が開発を進める東京・大手町で建設中のトーチタワーは、高さ385メートル・地上62階建てで、完成すれば日本最高層のビルとなる見込みです。この再開発において、同町が培ってきたノウハウと連携し、ビルの中で廃棄物再利用率100%を目指す「サーキュラーシティ」構想を推進しています。上勝町発のゼロ・ウェイストモデルが新たなフィールドで展開され、都市部におけるサーキュラーエコノミーの実現にも注目が集まっています。

5070HDCは、循環型・持続可能な社会づくりの現場を支える“次世代標準”として、今後ますます多くの現場で活躍していくことでしょう。上勝町の挑戦とともに、全国各地への広がりが期待されています。

今後の展望を話し合うゼロ・ウェイストセンター スタッフ(左)と当社社員(右)


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