衣類のクリーニング、法人向けのリネンサプライ、ユニフォームレンタル事業等を全国展開する株式会社白洋舍は、1906年(明治39年)の創業から110余年の歴史を持つ会社で、日本のクリーニング業界のパイオニアであり、リーディングカンパニーでもあります。 スーツやコート、ワイシャツといった衣類やシーツ、タオル、ユニフォーム等をクリーニングし、長く清潔に着用、利用できる白洋舍の技術は、繊維製品の寿命を延ばし、廃棄を減らすことで環境負荷の軽減に寄与していますが、白洋舍ではさらに、持続可能な社会の実現に向けて、3Rの推進やカーボンニュートラルへの挑戦などの取り組みを進めています。
ハンガーリサイクル定着、次はポリ包装
クリーニング業界では、2022年(令和4年)施行の「プラスチック資源循環促進法」により、プラスチックハンガーと包装用衣類カバー(ポリ包装)の廃棄物排出抑制、再資源化(回収・リサイクル等)に取り組むことが求められています。 白洋舍では、プラスチックハンガーに関しては、この法令が施行されるずっと以前から回収・リサイクル・再利用を実施しており、2023年に回収・再利用したプラスチックハンガーは約2,337,500本、61トンのCO2に相当する温室効果ガス削減効果があったといいます。
自動包装の工程で発生するポリ包装の廃棄品
一方、ポリ包装については白洋舎でも回収ではなく、薄肉化(より薄くする)やバイオマス化により使用するポリ包装の総重量を削減してきましたが、2025年からは、さらに一歩進んだ「再資源化」に挑戦することになりました。 それは、循環型サプライチェーンをデザインするレコテック株式会社が提供する「pool」を活用したポリ包装のマテリアルリサイクル(廃棄物を新しい製品の原材料として再利用)です。 poolは、廃棄物をデータ化することによって回収インフラを構築し、リサイクル材料を活用したい製造業者と排出事業者を繋ぎ合わせてトレーサビリティの取れる循環型サプライチェーンをデザインするための仕組みです。
ポリ包装の薄肉化は限界 マテリアルリサイクルへ
レコテックのシステム導入に携わった、資材・機械を取り扱う白洋舍のグループ会社 株式会社双立・宮川義信代表取締役社長は、「ポリ包装の薄肉化は、これ以上薄くすると自動包装機がエラーを起こすばかりで、限界にきていました。今後の方向性を模索していた頃、レコテックのリサイクル事業が東京都の『プラスチック資源循環に向けた革新的リサイクル技術・ビジネスモデル推進プロジェクト』に採択された記事を読みました。川上から川下までの仕組みが出来上がっており、かつ都の助成対象ということもあって、導入に至りました」と話します。 システム運用にあたっては、ポリ包装を圧縮して再生ペレット業者が直接回収する形の提案があり、都の助成金を活用して圧縮減容機を導入。圧縮することで、「空気を運ぶようなもの」というポリ包装リサイクルにおける大きな課題も解消されました。
クリーニング業界初導入の圧縮減容機
白洋舍首都圏本部・多摩川工場に設置されたのは、オーワックジャパン株式会社の「連結式中型圧縮減容機5070HDC」。クリーニング業界では初の導入となります。 5070HDCは、圧力10tの強力タイプで、つぶれにくいプラスチック容器や一斗缶、ペール缶にも対応し、かつ最大6本のヒモ掛けが可能で、縦横クロス結束によりしっかりと梱包できるのが特長です。 また、ボックスは連結式なので、分別しながら圧縮すれば作業効率アップにつながり、ボックスごとに圧力を変更することもできます。 多摩川工場では、5070HDCにポリ包装を投入して圧縮。これを3~4回繰り返して約20㎏ごとに結束して計量すると、そのデータが再生ペレット業者にも共有され、一定量になると回収される仕組みになっています。回収後のポリ包装は再生ペレットに加工され、再生プラスチック製品へと生まれ変わります。
クリーニング業界初導入の圧縮減容機 5070HDC
かさばるポリ包装を圧縮して減容
リサイクルを見える化するデータは、回収業者とも共有
手前は圧縮前、奥が圧縮後のポリ包装
将来的にはお客様からの回収も検討
クリーニング業界初となる「ポリ包装の再資源化」は、3Rの推進や、廃棄物処理における温室効果ガス排出量を削減することはもちろん、これまで産業廃棄物として処理にコストをかけていたものが、逆に有価物として売却できることになり、コスト削減も期待できます。 なお、ポリ包装は現在、PE(ポリエチレン)とPP(ポリプロピレン)の2種類を使用しており、混載した状態で処理していますが、いずれはPPに統一することを検討しており、それによって有価物としての価値も上がることになります。 また、白洋舍のマテリアルリサイクルは現在、工場の生産工程から出るポリ包装の廃棄物のみを対象としていますが、クリーニングを利用するお客様からも回収することになれば、再資源化できる量は桁違いに増えることになります。ただ、そのためにはクリアしなければならない高いハードルがあるようです。 「ポリ包装をお客様から回収する場合は産業廃棄物扱いとなり、産廃処理業者としての指定を受けなければならず、集配車とは別に回収専用の車両が必要です。これでは実現は難しい。ただ、スーパーマーケットが食品トレーを回収しているように、ポリ包装のリサイクルも実績を積んでいくことで有価物として認められる可能性はあります。そうなれば、既に訪問先から回収しているハンガーや水のペットボトルと同様に、ポリ包装も回収していきたいと考えています」(髙林俊夫執行役員クリーニング事業部首都圏本部工場部長)。
双立・宮川義信代表取締役社長(左)と白洋舍東京工場・川原健太郎工場長
持続可能な循環型事業の構築へ
圧縮減容機5070HDCについては作業性、安全性とも高く評価しており、多摩川工場の実績を踏まえて2025年度中にもう一台、都内の別工場に導入する予定になっています。 また、今後はポリ包装に限らず、段ボールやペットボトルなどリサイクルの品目を広げていくことも検討しており、さらにユニフォームレンタルにおいても、更新時に大量廃棄となるユニフォームをリサイクルしていく構想もあるといいます。 髙林執行役員は「私たちの事業から出る廃棄物を極力なくしていき、最終的にはあらゆるものを再生、循環できるようにしていくことが目標です」と話しました。 クリーニング業界のリーディングカンパニーとして、ポリ包装のマテリアルリサイクルに挑戦する白洋舍。その取り組みが今後、業界全体に拡がっていくことが期待されます。